2014年7月10日

おとなの歴史

読売テレビの情報番組から、コメント出しの依頼を受けました。
ここに来て、「大人(おとな)の○○」といったネーミングの商品が増えている背景について、のコメントです。

まず、こうしたネーミングの人気商品は、20年以上前からあります。永谷園の「おとなのふりかけ」は1989年発売ですからね。また、雑誌では、「大人(おとな)の○○」と銘打ったものが、2000年前後に相次いで創刊されています。「大人の京都」などのシリーズ(阪急コミュニケーションズ)「おとなの週末」(講談社)、「日経おとなのOFF」(日経BP社=当時は日経ホーム出版社)、など。(日経おとなのOFFという雑誌名は、当時、その創刊企画立案を担当した私が名付けました)。

いま再び、さまざまな商品で「大人(おとな)の○○」が脚光を浴びている事情は、いくつか考えられます。

まず、「いいおとなが少ない」という点。若い(幼い)ことが美徳のような雰囲気すら見られます。「女子会」「女子○○」「○○女子」というネーミングがもてはやされることなど、まさにその表れといえるかもしれません。

「大人(おとな)」という言葉も、どこか半笑いで用いられている傾向が見て取れます。「いいおとな」という意味合いよりも、「あ、俺たち(私たち)、よく考えたらおとなじゃん」という感じ。「大人AKB」なんて、まさしく、そういう文脈のうえで成り立つネーミングですよね。
 
もうひとつは、免罪符=楽しい言い訳としての活用でしょうね。大人のお菓子、大人のお子様ランチにしても、大人向け玩具にしても、まさにそう。これは2000年代半ばに3万円する仮面ライダーベルトが注目を集めた辺りからの傾向といえるでしょう。

ただし、私は「大人(おとな)の○○」というネーミングを否定する立場ではありません。
いいじゃん、いいおとなじゃなくたって、とすら思います。

ノスタルジー消費(昔を懐かしむための消費、子どものころ思い切って買えなかった商品の消費)はいつの時代もあるものですし、いま、そこに「大人(おとな)の○○」という分かりやすい呼称がかぶさっただけ、ともいえますからね。